親方日記

人は自然、虫も自然(2)

2020.06.27

私は今、山梨県の清里というところにいる。何をしに来たかというと、「虫とり」である。

いい大人が「虫取り」などというと変に思われるかもしれないが、数年前からゾウ虫という種類の虫を採集している。今日は、朝6時に越前市を車で出発し、ここについたの11時であった。少し早いが、朝食もそぞろだったので昼食をとる事にした。

そこに思わぬ連絡が携帯電話に入ってきた。なんと、この原稿の催促である。今日の18時までに原稿を送るという約束をしてあったのに、すっかり忘れていた。原稿には何一つ手を付けていないし、"どうしよう" 50歳(当時)を少し過ぎたばかりでボケたわけではないが、なんと、思わず焦ってしまった。実は午後からは、作家であり虫好きの養老孟子先生と一緒に虫取りをすることになっている。今回は、虫取や虫について、先生とお話したことを書かせていただく。

二か月前(当時)に私が越前市の村国山で取ったゾウ虫で「エノキミツギリゾウムシ」というのがある。九州では見つかっているが、本州では、これが初めてらしい。それでこのゾウ虫についてだが、先生の話によると、この虫はアリと共生しているらしい。先生はまだ自分では取ったことがないらしく、いろいろと私に聞いてこられた。例えば、何の木について、その時アリがいたかどうか。また、どういう名前のアリか、という事だ。村国山でこの虫とりをしている時、南越前町の奥野宏様とご一緒していただいたが、奥野様はアリの研究家でもあり、ちょうどその時アリを取っておいて下さいとの事で、私は大事にアリを保管しておいたのです。アリの名前を聞いたら、「クロクサアリ」の種類らしい。たまたま私はゾウ虫とアリを同時に採取したが、同時に取れたから共生しているという証にはならない。偶然同時にとれたという事もあるからである。養老先生が仰るには、今度エノキミツギリゾウムシを取った時にまた同時にクロクサアリがいたら、証にはならなくとも共生している確率が高いであろう!という事です。ここで私が気になるのは、種類の違う虫が共生しているという事である。争いの絶えない人間界に住む私の目から見れば、この虫達が仲良く共生しているとしたら、きっと平和に生きるヒントを虫達から教えていただけるかもしれないと、ふと、そんなことを考えたりする。

養老先生のお宅の電子顕微鏡で、虫を見せていただいた事がある。肉眼では見えないが、それぞれの手足や背中を見ていると素晴らしい模様や色、人間業では到底追いつかない神秘の世界を、この歳になって教えていただいた。科学はどんどん進歩しているかのように思えるが、自然をしっかり受け入れて、同時に、素直な心で自然から真実を学ぶことが私たちの使命のようにも思えるのです。

一体、虫たちは何を考え、何を信じ、何を見つめて生きているのであろうか。

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